行雲流水

趣味の関連など。かきたいことをかきたいときに

都築圭と水 02. 雨

 本記事は2020年12月20日にOnline SideM学会にて私が発表させていただいた内容をまとめなおしたものになります。モバイル版アイドルマスター SideM イベントストーリーやカードセリフ等のネタバレを多分に含む内容となりますことをご留意ください。

 

01. 導入 [ https://rohdea68.hatenablog.com/entry/2020/12/23/213642 ]

 

 初めに、都築圭と雨について取り上げます。

 

 

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 都築圭は雨の日にPと出会い、スカウトを受けます。

 このときの都築は何かを口ずさみながら傘もささずに雨の中をひとり歩いており、Pはそんな彼に名刺とともに傘を手渡してその場を去ります。残された都築は茫然とその場に立ち尽くしているようにも見え、自身がアイドルになるということに慌てることも、胸をときめかせることも、怪訝な顔をみせることもありません。単に実感がないのかもしれませんが、自分自身のことなのですからもう少し感情の機微をみせる方が自然なように私には思えます。

 

 

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 その後、麗さんとAltessimo を結成しアイドル活動を開始した都築さんにひとつの転機となるイベントが訪れます。2016年6月7日~6月15日に開催された「とどけ!虹の音楽祭(以下、虹の音楽祭とします)」です。

 虹の音楽祭は初めて都築が自身の過去について自らの言葉で触れたイベントであると私は認識しています。なお、次のイベントであるJupiter さんとご一緒した「最恐怪奇譚~戦慄のメロディ~」ではより具体的な言及があります。

 このイベントでは都築が過去に楽曲を提供していたアイドルである「伝説の歌姫」についても触れられていますが、本発表では“都築圭が神楽麗のために作る曲 ” に注目してお話をしたいと思います。

 

 ひとつ前のイベントである「出陣!315戦国村」において、都築の何気なくつくった曲を麗さんが気に入り、それを受けた都築は麗さんのために曲を作りたいと伝え、麗さんもそれを快諾してくれます。

 しかし、そんな曲作りが思うように進まないところから今回のイベントストーリ―は始まります。麗さんが歌姫の話題を振っても「確かに彼女は素晴らしかった」「でも今は、麗さんのために曲を作りたいんだ」と答える都築。

 

 この時点ですでに、(スカウト時)自らのことにも心動かなかった都築が麗さんという他者に向けて明確な意思を持つようになっているわけです。

 

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 いつも自分の手をひいてくれる麗さんのために、と焦りを口にする都築に、麗さんは「当たり前のことをしているだけですよ」と返します。都築は「そんな君だから曲をつくりたいと思ったんだ」と原点に立ち返ります。

 

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 そして麗さんのために曲をつくるヒントを自らつかんでいく様子が描写されます。

 この一連のやりとりにおいて、都築は ①自らのなかで発生した問題を言語化し ②それを他者に伝えることを介して問題を解消し ③自らの音楽に還元する というプロセスを踏んでいます。

 これはスカウト時の周囲に目もくれずひとり音楽を口ずさむ姿と対照されうるものではないでしょうか。

 

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 また、このイベントでのSR+ が上図【雨音の詩】+ です。

 虹を背景に、晴れた空に歌を響かせる都築圭。美しいですね。

 

 これまでのイベントストーリーおよびアルバム台詞から

これまで音楽にばかり関心を示していた都築が“音” 以外の美しさを見出す姿や、未来へ向けた視点を獲得した様子が見て取れます。

 

 Youtube Live配信時にお見かけしたコメントに

「どうしようもなく音で世界を捉えていた都築さんが、人との関わり、世界の美しさを全身で捉えていく… これは音楽神の御子への救済なんですよ」というものがありました。美しい表現ですね……

 

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 さらにSide Memories では 

「もしも君が僕を見つけてくれなかったとしたら… 」

「僕は今でも1人で、雨の中をさまよい続けていたと思う。」と、かなり過去の自分について自覚的な発言をしています。

 

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 補足となりますが、今年の麗さんの誕生日には雨の日をネガティブな印象もなく楽しんでいる様子が見てとれます。

 

 また、2018年3月20日~3月26日に開催された「深緑~温かな調和~」では、いつか都築のつくる音楽に魂を吹き込んでみせると意気込む麗さんに

その時が楽しみだが焦らなくて良い、自分たちの歩幅でゆっくり頑張ろう と伝える都築の姿があります。この言葉からは虹の音楽祭で見せた焦りを乗り越えた様子が伝わってきます。

 加えて、同じ文言でも履歴書に記載された“poco a poco” が急ぐことに前向きでない印象を与えるのに対し、ここで用いられた“poco a poco” はあくまで自分たちのペースでも前に進んでいこうという前向きさを感じられるものであるように思います。

 

 

 

 次の記事では、都築圭と海についてお話させていただく予定です。